第1回授業研究会 協議会記録


<日時>平成16年6月21日(月)午後3時10分〜4時35分
<会場>北区立滝野川第一小学校


1.研究経過報告 [授業構成部]

指導案の2ページ,「研究主題との関連」について説明する。
今回の授業は,新聞というメディアに注目した。総合的な学習の時間か,国語か? 研究主題の確かな学力の育成というところから考えて,国語の目標に絞った。
都小視研が捉えた学力を表した構想図の太字のところ,表現,できる,使える,交流・共有・評価に重点を置いた。研究のねらいとしては,学力の確実な定着を目指す工夫に重点を置いた。
新聞という情報手段については,後ほど講師の先生にご指導して頂きたい。
研究構想図の中の位置づけとしては,相手にわかりやすく,的確に伝えるための情報手段を身に付けることをねらいとした。

2.授業者自評

指導案を作る際に総合的な学習か,国語かで迷った。確かな学力の育成という面から,国語の学力の定着を考え,新聞作りに取りかかった。
岩井に行く前に,実際の新聞を見,みんなが伝えたいことや岩井の体験を伝えようとした。伝えるための方法として,インタビューをとっかかりとした。
帰ってから,どの部分をお見せするのがよいか,初めは完成した新聞についてよかったかどうかを判断すると思ったが,完成しちゃうと,見合って終わりになっちゃう。そこで,下書き段階で見合って,意見を交換して,修正して,子どもたちが見てもらいたいと思っているお家の人たちに見せることとした。
今日は,友達の良かったところを参考にして,指摘されたところは修正して,よりよい新聞にしようということで,学力として定着させようということになった。
初めの部分の指示が長くなってしまい,どの子にも付箋が付き,修正する点を班で話し合うところに重点を置きたかったが,時間がずれて,充分にできなかった。

3.研究協議

<参観者から寄せられた短冊の紹介>

○新聞を書く(見る)ポイントがわかりやすく整理されていた。
○6項目×6枚の内容を分析する手だてを探りたい。
○今日の授業で、「見出しの中の言葉」や「事実と感想」という点についてより意識をもたせるにはどうしたらよいか。
○見出しのどの言葉がよかったのか、全体で振り返る場があるとよかった。「よかった言葉集めコーナーのような・・・」
○他者の指摘を参考に修正しようという気持ちになっていた。
○相手(本当の目的:家族 今日は:友だち)  目的(新聞? 感想文)  適切な表現(新聞の文体 タイトルの工夫 わりつけ) 整理したかった。
○ポストイットを書くときの指示がはっきりしていたので、子どもたちも書きやすかったのではないか。
○児童の学習態度が良い。日頃の指導が・・・・。
○学習環境がよく整っていた。
○緑のカード  〜した方がわかりやすい。   アドバイスする上で大切な指導
○伝えるには、感動と技能の両方が必要。それをバランスよく身につけさせる指導が大切と感じた。
○「新聞」というのは、どのような条件をみたしていれば「新聞」といえるのか。

司会
ポストイットはたくさん飛び交ったが,どうだったか?

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緑のカードにこうした方がよいと具体的に書いていたのが,すごいと思った。

司会
完成してしまうと終わったという気になるが,今日は修正することを前提とした。
今日帰る時に,あそこを直そう,という気持ちになったかがポイントだ。

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ブルーは見栄えのことが多かったが,言葉に注目したものもあった。全体に,取り上げるとよかった。最後の場面が,時間がなくなってしまいもったいなかった。

司会
見た目にとらわれるということは予想された。下書きだけど,レイアウト,字の濃さを工夫した班もあったが,言葉にこだわらせるのがポストイットの工夫だった。今後,どういうアドバイスをしたらよいか?

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見出し,5W1H,事実と意見の感想を出していたが,子どもの様子を見ると難しい。事前研究会では,5W1Hを軽く扱い,事実と意見は難しいということで,見出しが中心になった。外山先生も,言葉が中心だよと強調したが,誤字とかに気持ちがいっちゃった。

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もっと絞り込んだ方がよい。ほめられたことは喜んでいた。ポストイットを書く段階で,絞り込んでいく必要があった。

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よい新聞のイメージが足りなかったか。子どもたちに「よいところを発表して」と言った時,誰も手が挙がらなかった。結局,先生がポストイットの内容を読んでしまっていたが,○○君が書いたこの部分を,□□君がほめたんだね,と言えばよかった。そうすることにより,国語の力がついたと思う。
他の班は青のポストイットが多かったが,6班だけ緑が多かった。先生がどう対処するかな,と見ていたが,・・・(書き取れませんでした)・・・。よい新聞のイメージがなかったか。

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新聞を書く以前に,いい新聞を見て,イメージを付けておく必要があった。低学年から,系統的に見せていく。そこから,書く活動をしていく。何かのカタチを決めてあげて,書き上げていくようにしていく。

司会
最近,子どもたちがどれくらい新聞を読んでいるか?

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自分の家の子どもは,テレビ欄と漫画だけだ。

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本物の新聞と今日の新聞とはちがう。

司会
ポストイットについては,よかったか,しまったと思ったか。今日が初めてだったということだが,ポストイットのポイントは何か? 言葉との結びつきだから。2班の右下に,いっぱいポストイットが集中していた。こうした方がいいよという見出しがあった時,どう工夫したらよいか,ということが課題だ。6班は緑が多い。アドバイスを与える子どもたちが,どのような指導を受けると青が増えるのか? それが分かると,明日からの指導に生かせる。

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先生の指示は長かったが,よくわかった。ポストイットを書く時の時間が短かった。「えー,もう終わり?」という声が聞こえてきた。下書きを書く段階で,先生の指示が分かっていると,青が増えた。

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どういうのがいい見出しか分かっていることが大切だ。見出しは,要点を短く書くこと。子どもは,次を見たくなるかというところを見た。6年でも,スポーツ新聞では,気を引く見出しがあった。要点をつかむ練習をすると,よかったのではないか。

司会
キャッチコピーを書く訓練も大切だ。

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ポストイットを書く時,最初,子どもはジーッと見ていた。子どもたちは,共通の体験を頭に描きながら,新聞を見ていた。

授業者
他の班の新聞を見るのは,初めてだった。自分には(ポストイットが)一枚も来なかった,という子が2人いた。もらえるとうれしいんだよ。もっと,(ポストイットを)貼る時間を作ろうねというと,ワーッと喜んだ。子ども同士で評価し合うことに関心が高い。指示を短くして,新聞を見合う時間,(ポストイットを)書く時間を増やすとよかった。ジーッと見ている時間があるとは,思わなかった。もっと,新聞を見合ったり,(ポストイットを)書く時間が必要だったと思った。

4.指導講評

<講師>吉成勝好先生(前全国新聞教育研究協議会会長・前練馬区立大泉第二小学校長)

 滝野川一小は、戦前、日本で最も早い時期に先駆的に「新聞学習」に取り組んだ輝かしい歴史を持っている学校で、感慨深い。今回の授業は、まず指導案がとてもよかった。そして、子どもたちが真剣にやっていた。学級の温かい雰囲気に、担任の先生の人柄が表れていて好感が持てた。
 新聞教育には、3つの分野がある。

1)子どもが作る,新聞作り。

2)NIE 一般紙を教育に活用する。

3)新聞の機能学習。メディアリテラシー。メディアに対する接し方。
その中でも、中心は新聞作り。その役割は、(資料1ページ)
(1)豊かな人間関係を育む。
(2)一人一人の子どもに確かな力をつける。情報活用能力。
 @新聞は読み手を意識する。
 A誰のために,何のために出すか。
 B・・・・・
 Cいつ,どこで,誰が,誰を,何を,なぜ,どのように・・・など。
 D情報の主人公になる。責任,モラル,マナーを付ける。
 E・・・・・
 Fインタビュー時に対人関係を学べる。
 G・・・・・
 H・・・・・
 I何よりも喜び。
 今回は国語で扱ったが、新聞作りは,きわめて総合的な学習である。4年生でよい体験をしたので、これが他教科や総合学習、学級文化活動としても、5,6年とつながり、発展できると良いと思う。
今日の授業のポイント。
1)誰に向かって発信するか?
 それを意識しながら制作することが大切だ。特定または不特定の他者に向けて、新しい情報を伝えるのが新聞の役割。例えば、今回の場合、子どもたちが班ごとに話し合った結果、どの班もみな「家族へ」となった。だとしたら,クラス全体として、「家族に読んでもらう新聞」を作るという目的に統一し、全体として一つの新聞を共同制作する、としたらよりよかったのではないか? 自分たちが伝えたいことと,家族の知りたいだろうとおもうことをたくさん出し合い、それを班ごとに分担して、1号7ページの新聞を作るというように。テーマは、「岩井移動教室大特集」とでもして。
2)書く時のポイント
 めあてとして、「いつ、どこで,だれが・・・が分かるように」「見出し」「事実と感想」と3つも設定するのは、6年生でも難しい。一つに絞ったほうがよかったろう。また、「5W1H」はニュース記事について言える項目で、今回のテーマのように既にそれらが分かっていることを書く時は、違う視点が必要と思う。ポイントは、5W1Hではなく,例えば「目に浮かぶように伝えよう」などとし、そのために「色,形、匂い、味、数,人の生の声」など、五感を駆使した具体的な表現ができるよう促す。行っていない家族が読んでも、よく分かるような工夫に意識を向けさせたい。
 大人の新聞を見せて,こんな新聞を作ろうといっても難しい。子どもの書いた良い新聞を見せるのが、最も効果的だと思う。
 「みのり」(資料3ページ)は、6年生の移動教室新聞だが、グループで記事を分担、全部12ページの中で,同じ記事はひとつもない。こういう新聞が目標となる。

☆見出しの役割(資料2ページ)
 @読者の目を引きつける。
 Aひと目で内容,要点,種類を分からせる。
 B見出しの大きさで,記事の大きさ,大切さを分からせる。

☆よい見出しとは
 @要点をズバリ書く。
 A文章を短く切る。
 B余分な言葉を入れない。
 C具体的な数字,固有名詞を入れる。
 見出し作りは,子どもはとても喜ぶ。2班の新聞の見出しがとてもよかった。「ガケが恐いぞハイキング」「イルカは運動神経二重丸」「目隠ししても・・・」など、驚嘆した。これらをよい見本として、賞賛し、全体に紹介したかった。
 子どもたちが基本的なことを学び、成熟していない段階で、意見を出し合い交換しても,得てして「字がちっちゃい」とかの些末な指摘にとどまってしまいがちである。まず,ポイントとなる留意点やモデルとなる作品を取り上げ、指導に生かす。教師の役割,方向付けが大切となる。
 視聴覚も同じと思うが,子どもがめあてとする学習活動に集中できる手だてが欲しい。
まっさらな紙を与えて,さあ書きなさいというのでは酷だ。まず外側に罫線を書く、これだけでも大変な作業。東京都小学校新聞教育研究会で作った新聞用原稿用紙・壁新聞用紙がある。これを使うと新聞作りの労力が格段に軽く、スムーズになる。子どもがやりやすい環境や用具を準備してあげたい。

☆レイアウト・・・よいレイアウト(割り付け)のモデルは、幕の内弁当あるいは駅弁。鯛飯弁当とかウナギ弁当とかテーマ(重点)があって、しかも色とりどりで美味しく見せる。適度に変化があり、食欲をそそる。ただ四角く区切っておかずを並べただけでは、美味しく見えない。しかし、独創的な配置にするには相当な才能がいる。定番というかセオリーの飾り付け方がある。新聞も同じ。まず、基本のパターンを子どもたちに示したい。日本の新聞が、100年の歴史を経て到達した基本パターン・セオリーが、いわゆる「x字型」だ。レイアウトでは、4班の新聞がすばらしかった。「見出し」「本文」そして「カット・図表・写真」の3点セットでワンセット,それらの間は線で区切らない。字ばっかり新聞にしないように。カット集,レタリング集,罫線集をまねするのもよい。見出しの字体・レタリングも、見本を示せば、子どもたちはどんどんうまくなる。今の子はセンスがある。大胆に書く。本番の清書では,全体にもっとカラフルに、せっかく撮ってきたデジカメの画像もどんどん入れると素晴らしい新聞になるだろう。
 省エネの工夫もしたい。レイアウトした紙面を、分担した各記事ごとに切り離し、個別に書いた後、再度合体する。この「切り貼り法」だと、大幅に時間が短縮できるし、部分的な失敗にも即対応できる。

☆新聞に必須の事項・・・新聞という伝達手段・表現形態の特色は、「制約の中で書く」ということだ。1枚の紙面の中に「一覧」できるように書く、記事の内容を端的に示すものとして必ず「見出し」を付けること、限られた字数の中で重要な事柄から先に書くこと、見出しの大きさと字数とで記事に軽重をつけること、読みやすい割り付けにすることなど。子どもの新聞でも、基本的に同じ。新聞として、最低限必須の事項もある。まず、「新聞名」。新聞名を決めるのは,子どもは好きだ。子どものセンスや発想を大切にしたい。発行者名。日付。号数。そして、各記事の最後に書いた人の名前を入れる。記事に責任を持つことでもあるし、「ここは私が書いたんだ」という達成感・成就感も得られる。

 とにかく、初めて新聞作りをしたことは,すごいことだ。ぜひ続けて欲しい。国語科としてだけでなく、いろいろな教科、総合学習、特別活動、そして学級文化活動としても位置づけ、継続的に取り組むようになれば、その効果は大きなものになるだろう。大いに期待している。

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 多くの社会科新聞はレポートだということだった。何をもって新聞とするか? 新聞作りのマストは何か?

講師
 まず相手意識だ。レポートは自分の学習成果の整理であり発表で、対象も先生に評価されることが前提だろう。新聞作りは,先生だけが見て,評価するだけでは無意味で、複数の発信相手に「読んでもらう」のが第一の目的だ。第二に、新しい情報を伝えるということ。自分なりの発見、未知の事実、自分や友達の見方や感想や意見などが表現されているかどうかが大切となる。第三に、新聞という表現形式の活用ということ、これについては先に述べたが、学校で新聞作りに取り組ませる場合、意外に教師が軽視していることのように思う。特に、取材ということを終始したい。現場主義と人間主義の重視を重視する。自分の目・耳・鼻・肌で感じつかみ確かめたことを文章にすること。取材の中では、特に他の人へのインタビュー活動をたくさん経験させたい。こういう活動を通じ、昨今の、インターネットで検索してプリントアウトしたものをそのまま貼って「調べた」ような気になる風潮を、ぜひ打破したいものだと考えている。


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